Column 1


2011年03月10日(木)
新しい海へ  …旅立つ塾生に贈る

新しい海へ

 

彼方へ! ぼくは行くのだ。そしてぼくは、

常にぼく自身と、ぼくの把握とを、(たの)む。

広々と海はひらけ、青い虚空へ、

ぼくのジェノアの船は進む。

 

一切がぼくに、新たに、いよいよ新たに、きらめき、

真昼は、時空のうえに、眠る。 ― ―

ただお前の眼のみ、 ― ―  巨きく、

ぼくを見つめる、無限よ!

 

 

 

星のモラル

 

星の軌道に予定されたお前には、

星よ、暗黒は何のかかわりがあるか。

この時劫(じごう)を貫いて、浄らかに進んでゆけ!

 

お前は時の不幸を離れ、遠くあらねばならぬ!

最も遥かなる世界に、お前の輝きはある。

 

同情は、お前に対する罪であるはずだ!

 
ただひとつの命令がお前には当てはまる、純粋であれと!

 

 





















       

 強き君たちの旅立ちに際し、このふたつの詩を贈りたい。

…哀しい哉、もう忘れかけてきてしまっているのだが、君たちと同じ頃を思い起こしてみると、当時の私は、かなり本気で「生きている」ということ・「生きる」ということはどういうことかを考え続けていたように思う。もちろん、楽しいこと・面白いことがいっぱいあったが、気がつけばいつも言いようのない焦燥感の中でその答えを求めてもがいていたように振り返る。そのような時に勇気づけてもらったのが、ニーチェというドイツの哲学者のこの2作品だ。大学時代にはドイツ語の辞書を引き引き何度も訳したことを思い起こす。

君たちにも夢がたくさんあるだろう。誰にだって夢がある。しかしそれを(つか)み取る人はそれほど多くない。そのような夢をひとつでも叶えるために、そのかけらでも手に入れるために、前進することを忘れずに。そして少しずつでもいい、決めたことを自分を信じて続けなさい。…残念ながら、人生は一度きりしかない。君たちの時間も限りあるものなのだから。

                               … Bon voyage!   



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